賃貸と持ち家はどっちが得?賃貸派・持ち家派を老後の住まいと家賃から比較
「家は買ったほうがいいの?」「賃貸のほうが自由でいいんじゃない?」住宅を購入するか、それとも賃貸に住み続けるか。いわゆる「賃貸派VS持ち家派」は、昔から何度も議論されてきたテーマです。
先日、Xでも「不動産を買わずに賃貸がおすすめ」という投稿を見かけました。そこには、「家賃を5,000万円払っても何も残らない」という意見もあれば、「賃貸派が増えれば、購入派が有利に買える」という意見もありました。
不動産の仕事をしている私からすると、こうした議論を見ていて一つ気になることがあります。そもそも「賃貸派」という言葉だけでは、その人がどんな人なのか分かりません。
十分な金融資産を持っていて、あえて家を買わない人もいます。一方で、老後の資金を十分に準備できていないまま、「家賃を払い続ければいい」と考えている人もいます。この2人を同じ「賃貸派」として考えていいのでしょうか。
私は20年ほど前から、「持ち家とは、老後に家賃を払わなくても住む場所を提供してくれるもの」と考えてきました。この記事では、「どちらが得なのか」という単純な比較ではなく、老後の住まいと住居費という視点から、賃貸と持ち家について考えてみます。
そもそも「賃貸派」とは何なのか?
「私は賃貸派です」と聞くと、「家を買わずに、一生賃貸で暮らす人」というイメージを持つかもしれません。しかし、実際には「賃貸派」にもいろいろなタイプがあります。
1つ目は、住宅を購入せず、家賃を払いながら生活する人です。住宅ローンを組むことや、住宅を所有することを避け、住み替えの自由度を重視するタイプです。
2つ目は、十分な金融資産を持ち、あえて自宅を購入しない人です。株式や投資信託、不動産などの資産を持っていて、「自分が住む家まで所有する必要はない」と考えるタイプです。
3つ目は、投資用不動産は所有しているけれど、自宅は賃貸という人です。これも決して珍しい考え方ではありません。これは「不動産が嫌いだから買わない」のではなく、「自分が住む家を資産として所有する必要性を感じていない」という考え方です。
この3つをすべて「賃貸派」という一言でまとめてしまうと、本質が見えにくくなります。
「老後も賃貸」は問題なのか?
例えば、十分な金融資産があり、老後の生活費、家賃、医療・介護費、高齢者向け住宅や施設への住み替え費用まで見込んで資金を準備している人であれば、「家を買わず、必要になったときに自分に合った住まいへ移る」という選択も十分成立します。
国土交通省の資料でも、高齢期の住まいは持ち家だけではなく、賃貸、高齢者向け住宅、施設など複数の選択肢があります。つまり、「老後=持ち家でなければならない」というわけではありません。
ただし、老後資金を準備していない賃貸派は話が変わってくる
ここが重要だと思っています。例えば、「住宅ローンを組みたくないから賃貸」という人がいたとします。30代、40代では、賃貸の自由さや住宅ローンを背負わないことにメリットを感じる人も多いでしょう。
毎月家賃を払って、好きな場所に住む。必要になれば引っ越す。非常に合理的です。しかし、60代、70代になったときも同じでしょうか。
ここで問題になるのが、「高齢になっても、今と同じ条件で賃貸住宅を借りられるのか」という点です。国土交通省も、家賃滞納だけでなく、居室内での死亡事故や死亡時の残置物処理などへの懸念から、高齢者の民間賃貸住宅への入居が制限される場合があることを政策上の課題として挙げています。
もちろん、高齢者だから賃貸住宅を借りられないという単純な話ではありません。高齢者向け住宅や見守りサービス、家賃債務保証など、高齢者が安心して賃貸住宅に住むための仕組みも整備されつつあります。
国土交通省も現在、高齢者などの賃貸入居について、大家側の不安を軽減するための制度や支援を進めており、2026年10月にも、そうした取組を行う居住支援法人等を支援するモデル事業の採択結果が公表されています。
つまり、「高齢になったら賃貸に住めない」ということではなく、「高齢になったとき、どんな条件で、どんな物件を選べるのか」まで、若いうちから考えておく必要があるということです。
需要の強い賃貸では、入居条件を比較されることもある
不動産の現場では、駅近・人気エリアなど、1つの部屋に複数の申込者が集まることがあります。そうした場合、貸主側は家賃の支払い能力だけでなく、保証会社の利用、緊急連絡先、入居後の管理、退去時の対応など、さまざまな点を考慮して入居者を決めることがあります。
だからこそ、賃貸派の人には、「今、借りられるか」だけではなく、「70歳、80歳になったとき、どんな住まいを選べるのか」まで考えてほしいと思います。
では、持ち家のメリットとは何なのか?
私は20年ほど前から、「持ち家とは、老後に家賃を払わなくても住む場所を提供してくれるもの」という考え方をしています。もちろん、持ち家でも完全に無料で住めるわけではありません。
- 固定資産税
- 修繕費
- 管理費・修繕積立金
- 火災保険
- 設備交換費用
などは必要です。それでも、住宅ローンを完済すれば、「毎月、誰かに家賃を払い続けなければ住めない」という状態からは抜けられます。これが持ち家の大きな意味だと思っています。
持ち家は「資産」だけではなく「老後の住居費を抑える手段」として考える
持ち家について語ると、「資産価値が上がる」「将来売却できる」「土地が残る」といった話がよく出ます。もちろん、それも重要です。しかし、私はもう一つ、「住居費をどうするか」という視点が重要だと思います。
例えば住宅ローンを組んだ場合、重要なのは「何年ローンを組むか」だけではなく、「自分が何歳で完済するのか」です。35年ローンを組む場合、30歳で借りれば65歳、40歳で借りれば75歳が当初の完済予定になります。
そのため、持ち家を「老後の住居費を抑える」という目的で購入するのであれば、「老後まで住宅ローンを残さない」、あるいは「残った場合にどう返済するのか」まで含めて考える必要があります。
もちろん住宅ローンを完済しても、固定資産税や修繕費、管理費などは残ります。「持ち家=老後の住居費がゼロ」というわけではありません。
それでも、「住む場所のために毎月家賃を払い続ける」という状態から抜けられることには、大きな意味があると思っています。だから私は、「持ち家を買う」ということは、「将来の住居費を先にある程度確保する」ことでもあると考えています。
ただし、持ち家なら何でもいいわけではない
ここは非常に重要です。「持ち家なら老後安心」とも言えません。
- 人口が減少している地域
- 売却しにくい場所
- 交通の便が悪い場所
- 維持費が高い住宅
- 老朽化したマンション
- 修繕費が大きくなる住宅
などを購入すると、別の問題が出てきます。高齢期には、医療・福祉・介護施設や買い物施設へのアクセスなど、住む場所そのものも重要になります。つまり、「持ち家なら安心」ではなく、「老後も住みやすい持ち家なのか」が重要です。
持ち家と賃貸の違い
持ち家と賃貸には、それぞれ違った負担があります。
| 持ち家 | 賃貸 | |
|---|---|---|
| 住宅ローン | あり・完済後なし | なし |
| 毎月の家賃 | なし※ | あり |
| 固定資産税 | あり | なし |
| 修繕費 | 原則自己負担 | 原則貸主負担 |
| 管理費・修繕積立金 | マンションはあり | 原則なし |
| 引っ越し | 自由度は低め | 比較的しやすい |
| 老後の住居費 | ローン完済後は維持費中心 | 家賃が継続 |
| 高齢期の住み替え | 売却・賃貸化など検討 | 新たな賃貸契約が必要 |
| 資産性 | 残る可能性あり | 住宅自体の資産は残らない |
| 大きなリスク | 立地・老朽化・売却 | 家賃継続・入居先確保 |
※持ち家では家賃の代わりに住宅ローンの返済があります。住宅ローン完済後を想定した場合、毎月の家賃負担はありません。
どちらが「無料」というわけではありません。違うのは、「どのタイミングで、どのような住居費を負担するのか」ということです。
「家を持つか」より「老後の住居費をどうするか」
結局、私はここに行き着くと思っています。持ち家派の人は、「老後の家賃を払わなくても住める場所を現役時代に確保する」という考え方。賃貸派の人は、「家を所有する代わりに、老後も家賃を払える資産を作っておく」という考え方。どちらも成立します。
注意したいのは、「賃貸なのに老後の家賃を払う資金を準備していない」ケースです。一方で、「持ち家なのに老後に維持できない家を買ってしまう」ことにも注意が必要です。
どちらのパターンも、「今の暮らしやすさ」だけを基準に選んでしまい、老後という長期の視点が抜けていることが共通しています。住宅ローンを組む・組まないという決断は、現役時代だけでなく、その先何十年もの住居費の形を決める決断でもあります。
老後の住居費を見積もるときに考えたいこと
「老後の住居費をどう準備するか」と言っても、具体的に何を見積もればいいのか分かりにくいという方も多いと思います。大まかには、次のような項目を洗い出してみると、持ち家と賃貸それぞれでかかる費用の違いが見えてきます。
- 持ち家の場合:固定資産税、火災保険料、将来の大規模修繕やリフォーム費用、マンションなら管理費・修繕積立金、設備交換費用
- 賃貸の場合:毎月の家賃、更新料、引っ越し費用、将来的に高齢者向け住宅や施設へ住み替える場合の費用
- どちらの場合も共通するもの:医療費、介護費、生活費
住宅ローンを組んでいる場合は、完済時期と、完済後に残る維持費がどの程度になるかを把握しておくと、老後の負担がイメージしやすくなります。賃貸の場合は、現在の家賃水準だけでなく、将来的な住み替えや家賃上昇の可能性も考慮し、年金や資産でどこまで賄えるかを考えておくことが大切です。
持ち家か賃貸か、判断の軸になる3つの問い
最終的にどちらを選ぶかは人それぞれですが、判断に迷ったときは、次の3つの問いを自分に向けてみることをおすすめします。
- 老後、毎月の住居費をいくら払うことになりそうか
- その住居費を、年金・資産・家賃収入など何で払うつもりか
- 高齢になったときに、今と同じ条件で住まいを確保できる見込みがあるか
この3つにある程度答えられるなら、持ち家でも賃貸でも、どちらを選んでも大きな問題にはなりにくいと思います。逆に、答えがあいまいなまま「なんとなく賃貸」「なんとなく持ち家」で進めてしまうと、老後になって想定外の負担に気づくことになりかねません。
お金を持っている賃貸派は、むしろ合理的
例えば、金融資産を十分に持っている。老後の生活費も確保している。必要になれば高齢者向け住宅や施設に移る資金もある。こういう人なら、「家を買わない」という選択は十分成立します。むしろ、無理に住宅ローンを組んで自宅を所有する必要がない場合もあります。
極端に言えば、「家を買わない」のではなく、「家を買わなくても困らないだけのお金を持っている」ということです。ここは「賃貸派VS持ち家派」を考える上で、非常に重要だと思います。
一方で、「老後資金は十分ではないけれど、とりあえず賃貸でいい」という場合は、話が変わってきます。同じ「賃貸派」でも、資産状況によって意味が大きく違うからです。
持ち家を選ぶ場合は、住宅ローンの組み方も重要になる
持ち家を選ぶ場合、老後の住居費を抑えるという目的を果たすには、現役時代のうちに住宅ローンを無理なく返済できる計画を立てることが重要です。金利や借入額、借入時の年齢によって将来の負担は大きく変わります。
特に、「何歳でローンを組み、何歳で完済するのか」は重要なポイントです。住宅ローンを組むタイミングや条件も含めて、自分の老後まで見据えて検討する必要があります。
住宅ローン金利の動向と、不動産の売買タイミングの考え方については、住宅ローン金利上昇と不動産売却についての記事でも解説していますので、あわせて参考にしてください。
夫婦・家族で考えておきたいこと
持ち家か賃貸かという選択は、一人で決める場合もありますが、夫婦やパートナーと一緒に暮らしている場合は、相手の考え方も踏まえて話し合っておく必要があります。
ペアローンで共有名義にしている場合、将来どちらかが先に住居費の負担を担えなくなったときにどうするかも、あらかじめ考えておきたいポイントです。
また、「自分は賃貸でいいと思っているけれど、パートナーは持ち家を望んでいる」というように、考え方が食い違うケースもあります。
老後の住まいは長期にわたる話だからこそ、早い段階で「老後にいくらの住居費を、何で払うつもりか」をすり合わせておくことが、後々のトラブルを避けることにつながります。
不動産業者としてではなく、一人の人間として考えると
ここまで不動産の仕事をしてきた立場から、賃貸と持ち家について考えてきました。最後に、業者としてではなく、一人の人間としての考えを書きます。
私は20年ほど前から、「持ち家とは、老後に家賃を払わなくても住む場所を提供してくれるもの」と考えています。もちろん、持ち家を持てば固定資産税もかかります。修繕費もかかります。だから、「持ち家=老後の住居費がゼロ」という話ではありません。
それでも、住宅ローンを完済した後に、「住む場所のために毎月家賃を払い続けなければならない」という状態から抜けられることには、大きな意味があると思っています。
一方で、十分な資産を持っている人なら、「家を所有せず、資産を運用しながら、必要なときに好きな場所へ住み替える」という考え方も合理的です。だから私は、「持ち家が正解」「賃貸が正解」とは思っていません。
ただ、「自分は老後、どこに住むのか」「毎月いくら必要なのか」「そのお金を何から払うのか」。この3つだけは、若いうちから考えておいた方がいいと思います。
まとめ|賃貸か持ち家かより、老後の住居費をどうするか
結局、「賃貸VS持ち家」という議論だけでは答えは出ません。お金を持っている賃貸派なら、賃貸は合理的な選択になり得ます。一方で、老後の家賃を払い続ける資金を準備していないのであれば、話は変わります。
持ち家も同じです。「家を買えば安心」ではありません。老後も住み続けられる場所なのか、ローンを完済できるのか、維持費を払えるのかまで考える必要があります。
私が20年前から考えているのは、「持ち家とは、老後に家賃を払わなくても住む場所を提供してくれるもの」ということです。ただし、これは「持ち家が正解」という意味ではありません。
大切なのは、「賃貸か持ち家か」ではなく、「老後の住居費をどう準備するか」。ここまで考えて初めて、自分に合った住まい方が見えてくるのだと思います。
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よくある質問
Q. 賃貸派と持ち家派、どちらが得ですか?
単純には比較できません。「お金を持っているから賃貸を選ぶ人」と「老後資金を準備できていないまま賃貸でいいと考えている人」とでは意味がまったく異なります。重要なのは、老後の住居費をどう準備するかです。
Q. 老後も賃貸で暮らすことに問題はありますか?
十分な資産があり、老後の家賃や生活費、介護費などを準備できていれば、賃貸を選び続けることに大きな問題はありません。ただし、高齢になると選択肢が狭くなる可能性があるため、若いうちから備えておくことが大切です。
Q. 高齢者は賃貸住宅を借りにくくなるのですか?
借りられなくなるという単純な話ではありません。国土交通省も、家賃滞納や死亡事故、残置物処理などへの懸念から入居が制限される場合があることを課題として挙げる一方、見守りサービス付きの住宅や家賃債務保証など、高齢者が安心して住める仕組みの整備も進めています。高齢になったときにどんな条件で物件を選べるか、若いうちから考えておくことが大切です。
Q. 持ち家を買う一番のメリットは何ですか?
住宅ローンを完済すれば、老後に家賃を払い続けなくても住む場所を確保できる点が大きなメリットです。ただし、固定資産税や修繕費などの維持費は残ります。
Q. 持ち家ならどんな家でも老後安心ですか?
必ずしもそうとは言えません。人口が減少している地域や売却しにくい場所、維持費が高い住宅を購入すると、別の問題が生じる可能性があります。老後も住みやすい立地・物件かどうかを考えることが大切です。
Q. 住宅ローンは何歳までに完済すればいいですか?
法律で決まった年齢はありませんが、35年ローンなら、30歳で借りれば65歳、40歳で借りれば75歳が当初の完済予定です。老後の住居費を抑える目的で持ち家を選ぶなら、老後まで住宅ローンを残さない、あるいは残った場合にどう返済するかまで含めて計画しておくことが大切です。
Q. 持ち家と賃貸、どちらが資産形成に向いていますか?
持ち家は将来売却できる資産として残る可能性がありますが、立地や維持費次第で資産価値は変わります。賃貸は住居に資産性はありませんが、住宅ローンを組まない分、その資金を他の資産運用に回せるという考え方もあります。どちらが向いているかは、資産運用に対する考え方や老後の資金計画によって異なります。
Q. 持ち家と賃貸、どちらを選ぶか迷ったら何から考えればいいですか?
「家を持つかどうか」ではなく「老後、どこに住み、住居費をどう支払うか」から考えることをおすすめします。老後の住居費をいくら、何で払うつもりか、高齢になっても今と同じ条件で住まいを確保できる見込みがあるか、という3つの問いに答えられると、自分に合った選択が見えてきます。
Q. ペアローンで共有名義にしている場合、老後はどう考えればいいですか?
どちらかが先に住居費の負担を担えなくなった場合にどうするかを、早めに話し合っておくことをおすすめします。完済時期や、完済後に残る維持費の負担についても、夫婦・パートナー間ですり合わせておくと安心です。

