相続した実家を売るときの流れ|手続き・費用・税金の特例をわかりやすく解説

相談者

親が亡くなって実家を相続したのですが、住む予定がありません。売ろうと思っているのですが、何から始めればいいのでしょうか?

不動産のプロ

まずは名義と相続人を整理するところからです。実家の売却は、通常の売却と違って、相続の手続きが先に必要になります。流れを順番に確認していきましょう。

相談者

売った後の税金も気になります。相続した家を売ると、かなり税金がかかるんですか?

不動産のプロ

条件を満たせば使える特例もありますが、期限や要件が決まっています。税金のポイントもあとで一緒に整理していきましょう。

この記事のポイント

  • 相続した実家を売るには、遺産分割と相続登記を済ませて、名義を相続人に変えておく必要があります。
  • 相続登記は、相続を知った日から3年以内に申請することが義務になっています。
  • 売却後は譲渡所得税がかかる場合があり、「空き家の3,000万円特別控除」や「取得費加算の特例」を使えることがあります。
  • 特例には期限があるため、売却の時期から逆算して進めることが大切です。

親が亡くなり、実家を相続したものの、遠方で住む予定がない、管理が負担になっている、という相談は少なくありません。売却を考えたとき、通常の不動産売却と違うのは、売る前に相続の手続きが必要になる点です。

名義が親のままでは、不動産を売ることができません。遺産分割の話し合い、相続登記、そして売却後の税金の申告まで、いくつもの手続きが順番に続きます。

この記事では、相続した実家を売るまでの流れを、手続きの順番、かかる費用、使える税金の特例に分けて解説します。制度の期限は個別の事情で変わるため、最終的には専門家への確認も前提に読み進めてください。

相続した実家を売るまでの全体像

相続した実家の売却は、大きく「相続の手続き」「売却の手続き」「売却後の税金の手続き」の3段階に分かれます。まず全体の流れを整理しておきましょう。

ステップ主なやること期限・時期の目安
1. 遺言書・相続人の確認遺言書の有無を確認し、戸籍をそろえて相続人を確定する相続開始後、できるだけ早く
2. 相続放棄・限定承認の判断借金が多い場合などは、家庭裁判所で手続きをする相続の開始を知った日から3か月以内
3. 遺産分割協議誰が実家を取得するか、売却するかを相続人全員で決める相続税がかかる場合は、申告期限も考慮して早めに進める
4. 相続登記実家の名義を亡くなった方から相続人へ変更する相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内(義務)
5. 査定・売却活動不動産会社に査定を依頼し、売却方法を決める相続登記と並行して準備できる
6. 売買契約・引渡し売買契約を結び、代金の受け取りと引渡しを行う売却活動の開始から数か月が目安
7. 相続税の申告相続税がかかる場合は、申告して納付する相続開始を知った日の翌日から10か月以内
8. 譲渡所得の確定申告売却して利益が出た場合や、特例を使う場合に申告する売却した翌年の確定申告期間(原則2月16日〜3月15日)

表の期限は目安であり、遺言の有無や相続人の人数、不動産の状態によって前後します。特に相続放棄、相続税の申告、相続登記は期限が決まっているため、早めに全体の予定を立てておくと安心です。

まず確認したいこと:遺言書・相続人・不動産の状態

売却の準備として、最初に次の3点を確認します。ここを曖昧にしたまま進めると、後から手続きが止まってしまうことがあります。

遺言書があるか

遺言書がある場合は、原則としてその内容に従って実家の相続先が決まります。自宅などで保管されていた自筆の遺言書は、勝手に開封せず、家庭裁判所での検認が必要になる場合があります。公正証書遺言や、法務局で保管されている自筆証書遺言は、手続きが異なります。

遺言書の内容によっては、実家を売却する前提で話を進められないこともあります。まずは有無を確認しましょう。

相続人は誰か

相続人は、戸籍をたどって確定します。「兄弟は2人だけ」と思っていても、戸籍を取り寄せると、前の配偶者との間に子がいたなど、想定外の相続人が見つかることもあります。

遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。一部の相続人を欠いたまま話し合いを進めても、後から無効になるおそれがあるため、必ず戸籍で確認しましょう。

実家の状態と権利関係

不動産そのものの状態も、早めに確認しておきます。見ておきたいのは、次のような点です。

  • 登記簿上の名義が、亡くなった親のままになっているか
  • 固定資産税の納税通知書(評価額や課税の内容を確認できます)
  • 住宅ローンや抵当権が残っていないか
  • 境界が確定しているか、越境物がないか
  • 家財道具(残置物)の量や、建物の傷み具合

こうした点を売却の準備段階で把握しておくと、査定の精度が上がり、売却のスケジュールも立てやすくなります。境界については、関連記事「隣地との境界トラブル、売却前にどう解決するか」でも解説しています。

遺産分割協議で決める「実家の分け方」

相続人が複数いる場合は、遺産分割協議で実家をどう分けるかを決めます。売却を前提にするなら、考えられる分け方は主に次の4つです。

分け方内容売却との関係
現物分割実家を特定の相続人が取得する取得した人が名義人になり、その人が売却する
換価分割実家を売却して、売却代金を相続人で分ける売却を前提にした分け方で、売却後の分配方法を決めておく
代償分割実家を取得した人が、ほかの相続人にお金(代償金)を支払う取得者が住む、または保有し続ける場合に向いている
共有分割相続人全員の共有名義で取得する売却には共有者全員の同意が必要で、手続きが複雑になりやすい

売却が目的であれば、換価分割が分かりやすい方法です。売却代金を分ける割合や、売却にかかる費用の負担、売却後に確定申告をする人などを協議の中で決めておくと、後のトラブルを防げます。

共有名義のまま相続すると、売却のときに共有者全員の同意が必要になります。共有者の1人が連絡を取れない、認知症などで判断能力が十分でない、といった場合は、手続きが大きく止まってしまいます。そのため、売却を前提にするなら、共有名義はできるだけ避けるのが基本です。

遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・押印します。この書類は、相続登記や相続税の申告にも使います。

売却前に必要な「相続登記」

実家を売るには、まず名義を亡くなった親から相続人へ変更する「相続登記」が必要です。名義が親のままでは、買主に所有権を移すことができないためです。

2024年(令和6年)4月1日から、相続登記は義務になりました。法務省によると、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記を申請する必要があり、正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になる場合があります。遺産分割で取得した場合は、遺産分割の日から3年以内に、その内容に基づく登記が必要です。

また、2024年4月より前に相続した不動産で、まだ登記をしていないものも対象です。この場合の期限は、2027年(令和9年)3月31日までとされています。

期限内に遺産分割がまとまらない場合には、「相続人申告登記」という簡易な制度があります。ただし、これは相続登記の義務を果たすための制度で、権利関係を公示するものではありません。実家を売却するときには、相続登記が必要になります。

相続登記の期限や罰則については、関連記事「相続登記の義務化、期限と罰則をわかりやすく解説」でも詳しく解説しています。

登記の申請は司法書士に依頼するのが一般的です。費用としては、登録免許税(固定資産税評価額の0.4%が目安)と、司法書士への報酬がかかります。

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査定と売却方法の選び方

名義の整理と並行して、不動産会社に査定を依頼します。相続した実家を売る方法は、主に「仲介」と「買取」の2つです。

仲介は、不動産会社が買主を探す方法です。時間はかかりますが、市場価格に近い金額で売れる可能性があります。買取は、不動産会社が直接買い取る方法です。早く現金化でき、残置物や建物の傷みがあっても対応してもらいやすい一方、仲介より価格が下がる傾向があります。

どちらが向いているかは、急いで売りたいのか、価格を優先したいのか、建物の状態はどうか、といった条件で変わります。詳しい比較は、関連記事「不動産売却の「仲介」と「買取」の違い、どちらを選ぶべきか」にまとめています。

古い実家の場合は、建物を残したまま売るか、解体して更地で売るかで迷う方も多いです。解体には費用がかかり、更地にすると固定資産税の住宅用地の軽減が受けられなくなる場合があります。解体するかどうかは、買主の意向も踏まえ、着手する前に不動産会社へ確認するのが安全です。解体費用の相場や注意点は、関連記事「建物解体費用の相場はいくら?解体前に知っておきたい注意点を現役スタッフが解説」で解説しています。

売主が個人であっても、売却後に建物の不具合が見つかると、契約不適合責任を問われる可能性があります。築年数が古い実家では、現況のまま引き渡し、責任の範囲を契約書で定めることが多いため、売買契約の内容は不動産会社に丁寧に確認しましょう。

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売却にかかる費用

売却では、売却価格から次のような費用が差し引かれます。手元に残る金額を考えるうえで、事前に把握しておきましょう。

費用内容・目安
仲介手数料上限は「売買価格×3%+6万円+消費税」(売買価格が400万円を超える場合)。実際の金額は不動産会社との契約による
相続登記の費用登録免許税(固定資産税評価額の0.4%が目安)と、司法書士への報酬
印紙税売買契約書に貼る収入印紙の代金。契約金額に応じて決まる
測量費・境界確定の費用境界が確定していない場合に必要になることがある
解体費・残置物の処分費建物を解体する場合や、家財道具が残っている場合にかかる
抵当権抹消の費用住宅ローンなどの抵当権が残っている場合に、抹消登記が必要になる

仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、建物を取り壊して土地を売る場合の取壊し費用などは、譲渡費用として譲渡所得の計算に含められる場合があります(国税庁 No.3202)。領収書や契約書は、売却後の確定申告に使うので、すべて保管しておきましょう。

売却後にかかる税金と使える特例

実家を売って利益が出ると、譲渡所得税がかかります。ここでは、基本の考え方と、相続した実家で使えることのある2つの特例を整理します。

譲渡所得税の基本

譲渡所得は、「売却価格-(取得費+譲渡費用)」で計算します。取得費は、土地や建物を買ったときの代金などが基本ですが、親が購入した当時の資料が残っていないことも多くあります。

国税庁によると、取得費が分からない場合や、実際の取得費が譲渡価額の5%より少ない場合は、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることができます。

また、相続で取得した不動産の所有期間は、原則として亡くなった親が取得した日から数えます。譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡となり、所得税15%、住民税5%の税率が適用されます(別に復興特別所得税がかかります)。税金の計算全体は、関連記事「不動産売却でかかる税金とは?譲渡所得の計算方法・税率・確定申告をわかりやすく解説」で解説しています。

空き家の3,000万円特別控除

一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。国税庁の記載(2026年10月時点)では、主な要件は次のとおりです。

  • 亡くなった方が相続開始の直前まで居住していた家屋で、ほかに居住者がいなかったこと(要介護認定などを受けて老人ホーム等に入所していた場合も、一定の要件を満たせば対象になることがあります)
  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋で、区分所有建物登記がされている建物ではないこと
  • 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 相続開始から売却まで、家屋や敷地が事業用・貸付用・居住用に使われていないこと(賃貸したり、誰かが住んだりすると対象外になります)。家屋を取り壊して敷地を売る場合は、家屋は取壊しの時まで、敷地は売却の時まで同様の要件があり、さらに取壊し後に敷地が建物などの敷地として使われていないことも必要です
  • 家屋を売る場合は、一定の耐震基準を満たしていること。または、家屋を取り壊して敷地を売ること。一定の条件を満たす場合は、売却後、翌年2月15日までに耐震基準を満たす改修や取壊しを行う方法もあります
  • 2027年(令和9年)12月31日までに売ること

2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡では、相続人が3人以上いる場合、控除額の上限は2,000万円になります。親子や夫婦など、特別の関係がある人への売却は対象外です。

適用を受けるには、市区町村が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」などを添えて、確定申告をする必要があります。耐震の要件や取壊しの時期には細かな条件があるため、売却前に税務署や税理士へ確認してください。

取得費加算の特例

相続税を納めた人が、相続した不動産を売ったときに、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例です。国税庁によると、相続開始の日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ることが条件です。

加算できる金額は、納めた相続税額に、売った財産の相続税評価額が占める割合を掛けて計算します。相続税が課税されていない場合は、この特例は使えません。

空き家の特例は、取得費の特例など、ほかの特例を同じ家屋・敷地に適用していないことが要件の一つです。どちらが有利かは、相続税の額や売却価格によって変わるため、事前に比較して選びましょう。

相続した実家の売却で失敗しやすいポイント

実務では、次のようなところでつまずくケースが少なくありません。

  • 相続登記を後回しにする: 売りたくなってから登記を始めると、戸籍集めや遺産分割に時間がかかり、売却のタイミングを逃すことがあります。
  • 共有名義のまま売却を進める: 共有者全員の同意が必要になり、1人でも反対や連絡不通の人がいると進みません。
  • 特例の期限を過ぎてしまう: 売却が決まってから期限を調べるのではなく、相続した時点で逆算しておきましょう。
  • 売る前に解体や片付けを進めてしまう: 固定資産税の軽減が外れたり、特例の要件に影響したりする場合があります。着手前に確認してください。
  • 査定を1社だけで決める: 会社によって査定額や得意な売り方が異なります。複数社で比較しましょう。

私ならこう進める

私なら、まず相続人全員で「売る」という方針を早めに共有します。実家の売却では、手続きの難しさよりも、相続人同士の意見がそろわないことで止まるケースが少なくありません。

次に、遺産分割協議の段階から、売却を前提にした分け方(換価分割)を検討します。並行して不動産会社に査定を依頼しておくと、「いくらで売れそうか」という共通の材料ができ、話し合いが進みやすくなります。

税金については、売却を決める前に、空き家の特例と取得費加算のどちらが使えそうかを確認します。特例の期限から逆算してスケジュールを組めば、慌てずに進められます。

参考情報

よくある質問

相続登記をしていなくても、実家を売却できますか?

できません。名義が亡くなった方のままだと、買主へ所有権を移す登記ができないためです。売却活動や査定は並行して進められますが、決済までに相続登記を済ませておく必要があります。

相続人の1人が売却に反対している場合、実家を売れますか?

共有名義の場合、実家全体を売るには共有者全員の同意が必要です。反対している理由を確認し、代償分割など売却以外の方法も含めて話し合いましょう。話し合いがまとまらない場合は、弁護士への相談や、家庭裁判所の遺産分割調停の利用も検討します。

相続した実家は、いつまでに売ると税金面で有利ですか?

使える特例によって期限が異なります。空き家の3,000万円特別控除は、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどが要件です。取得費加算の特例は、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ることが条件です。具体的な期限は相続の日によって決まるため、早めに税理士や税務署へ確認しましょう。

実家を解体してから売ったほうが、高く売れますか?

一概には言えません。解体には費用がかかり、更地にすると固定資産税の住宅用地の軽減が受けられなくなる場合があります。建物が付いたままでも購入を希望する買主もいます。解体する前に、不動産会社に売り方を相談しましょう。

売却して利益が出なかった場合も、確定申告は必要ですか?

譲渡所得が出ない場合、原則として譲渡所得税はかかりません。ただし、特例の適用を受ける場合などは、確定申告が必要になることがあります。ご自身のケースで必要かどうかは、税務署や税理士に確認してください。

売却代金は、相続人でどのように分けますか?

遺産分割協議で決めた内容に従って分けます。売却を前提にする場合は、換価分割として、売却代金の分け方や、売却にかかる費用の負担、確定申告をする人を協議書に明記しておくと、後のトラブルを防げます。

まとめ

相続した実家を売るときは、遺言書と相続人の確認、遺産分割協議、相続登記、売却活動、売却後の確定申告という順番で進めます。名義が親のままでは売却できないため、相続登記が前提になります。相続登記は、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請することが義務付けられています。遺産分割によって不動産を取得した場合には、その遺産分割の日から3年以内に、協議内容に基づく登記を申請する必要もあります。

売却後の税金では、空き家の3,000万円特別控除と取得費加算の特例が候補になります。どちらも期限や要件が決まっており、同じ家屋・敷地でほかの特例と併用できないことがあるため、事前の比較が欠かせません。

実家の売却は、手続きの順番と期限を押さえておけば、慌てずに進められます。迷ったときは、不動産会社、司法書士、税理士など、それぞれの専門家に早めに相談しましょう。

相続した実家や空き家の売却を検討している方は、姉妹サイトの不動産売却の窓口でも売却に関するご相談を受け付けていますので、ぜひご活用ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案への助言ではありません。制度の内容や期限は変更される場合があります。相続・登記・税務に関する個別の判断は、司法書士や税理士などの専門家、所轄の税務署や法務局にご確認ください。

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