隣地との境界トラブル、売却前にどう解決するか

実家を売ろうとしたら、不動産会社から『境界標が見当たらないので、隣の家との境界を確定してからでないと売却が進めにくい』と言われてしまって…そもそも境界って何を確認すればいいんですか?

境界トラブルは、売却の直前になって発覚することが多い典型的な落とし穴なんです。今日は境界トラブルの原因と、売却前にどう解決すればいいかを整理していきましょう
土地を売却しようとしたとき、「隣地との境界がはっきりしない」という理由で話が止まってしまうケースは少なくありません。境界標が古くなって見当たらない、隣家との間に塀があるが実際の境界線とズレている、越境した木の枝が何年も放置されている――こうした問題は、住んでいる間は気にならなくても、いざ売却するとなると大きな障害になります。この記事では、不動産業界で働く現役スタッフの立場から、境界トラブルの原因と、売却をスムーズに進めるための解決方法を解説します。
境界トラブルとはどんな問題か
境界トラブルとは、隣接する土地の所有者同士で境界線の位置に関する認識が食い違っている状態を指します。境界標の紛失や移動、塀・フェンスの位置のズレ、樹木や建物の越境、口約束のみで境界が決められているケースなど、原因はさまざまです。多くは長年放置されており、当事者が気づかないまま何十年も経過していることも珍しくありません。
境界トラブルとは、隣接する土地の所有者同士で、土地の境界線の位置について認識が食い違っている状態を指します。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。
- 境界標(コンクリート杭やプレートなど)が見当たらない、または移動している疑いがある
- ブロック塀やフェンスの位置が、実際の境界線とズレている
- 隣地の樹木の枝や根が自分の敷地に越境している
- 隣地の建物の屋根や雨樋が、わずかに自分の敷地にはみ出している
- 先代の所有者同士の口約束で境界が決められており、書面が残っていない
多くの場合、これらの問題は長年放置されてきたもので、当事者同士が気づかないまま何十年も経過していることも珍しくありません。
なぜ売却のタイミングで問題が表面化するのか
境界トラブルが表面化しやすいのは、まさに売却のタイミングです。買主や住宅ローンを扱う金融機関が境界の明確化を求めることに加え、分筆や確定測量を行う際に隣接地の立ち会いが必要になり、これまで気づかなかった境界のズレや越境が発覚しやすくなるためです。
境界トラブルが表面化しやすいのは、まさに「売却」のタイミングです。理由は主に2つあります。
買主・金融機関が境界の明確化を求めるため
土地を購入する買主や、住宅ローンを扱う金融機関は、境界が不明確な土地を敬遠する傾向があります。境界が曖昧なまま売買すると、後から「実は隣地の一部を含んで売却していた」といったトラブルに発展するリスクがあるためです。特に、土地の実測面積をもとに売買契約を結ぶ「実測売買」の場合は、境界確定が前提条件になることがほとんどです。
分筆・測量の際に境界標の確認が必須になるため
相続で土地を分ける「分筆」を行う場合や、正確な面積を測る確定測量を行う場合、隣接するすべての土地所有者の立ち会いのもとで境界を確認する作業が必要になります。この過程で、これまで気づかなかった境界のズレや越境が発覚することがあります。
境界標と境界確定測量の基本
境界標は土地の境界点を示す杭やプレートで、経年劣化や工事で紛失・移動していることも少なくありません。境界標が見当たらない場合や境界に疑義がある場合は、土地家屋調査士による確定測量を行い、隣接地所有者全員の立ち会いと合意のもとで境界確認書を取り交わすことで、法的に明確な境界を確定できます。
境界標とは
境界標とは、土地の境界点を示すために設置される杭やプレートのことです。コンクリート杭、金属鋲、プラスチック杭などさまざまな種類があり、分譲時や過去の測量時に設置されているのが一般的です。ただし、数十年前に設置されたものは、工事や経年劣化で紛失・移動していることも多く、売却時に「境界標が見当たらない」というケースが頻発します。
確定測量とは
境界標が見当たらない、または境界の位置に疑義がある場合には、土地家屋調査士に依頼して「確定測量」を行うのが一般的な解決方法です。確定測量では、隣接する土地の所有者全員の立ち会いのもとで境界を確認し、合意が得られれば「境界確認書」を取り交わし、新たに境界標を設置します。この手続きを経ることで、法的にも境界が明確な状態になり、安心して売却を進められます。
確定測量には、隣接地が個人所有か、道路など公共用地かによって手続きが異なり、官民境界の確定を含む場合は数か月かかることもあります。売却を検討し始めた段階で、早めに測量の見積もりを取っておくことをおすすめします。
越境トラブルへの対応
樹木の枝や根、ブロック塀や建物の一部が境界線を越えている「越境」には、隣地所有者との合意に基づいた対応が基本です。枝の越境は法改正により条件付きで自ら切除できるようになりましたが、根はもともと自分で切除可能とされています。建物や工作物の越境は、将来の是正内容を盛り込んだ「覚書」を取り交わしておくのが一般的です。
樹木の枝・根の越境
隣地から自分の敷地に木の枝が越境している場合、これまで民法では「所有者に切除を求めることはできるが、自分で勝手に切ることはできない」とされてきました。ただし、法改正により、一定の条件下では越境された側が自ら枝を切除できるケースも認められるようになっています。とはいえ、トラブルを避けるためには、まず隣地所有者に相談し、双方合意のうえで対応するのが基本です。根が越境している場合は、従来から自分で切除できるとされています。
建物・工作物の越境
ブロック塀や建物の一部が境界線を越えて建てられているケースもあります。この場合、売却前に越境の範囲を明確にし、「越境に関する覚書」を隣地所有者と取り交わしておくことが一般的な対応です。覚書には、将来どちらかが建て替えを行う際には越境部分を是正する、といった内容を盛り込むことが多く、買主にとっても安心材料になります。
境界が未確定のまま売却するとどうなるか
境界が未確定のまま売却活動を進めると、買主が見つかりにくくなったり価格交渉で不利になったりするほか、契約後に境界トラブルが発覚して契約不適合責任を問われるリスクもあります。住宅ローンを利用する買主の審査に影響することもあるため、売却を検討し始めた段階で境界の状況を確認しておくことが重要です。
境界が未確定のまま売却活動を進めることも不可能ではありませんが、いくつかのリスクがあります。
- 買主が見つかりにくくなる、または価格交渉で不利になる
- 契約後に境界トラブルが発覚し、契約不適合責任を問われる可能性がある
- 住宅ローンを利用する買主の場合、金融機関の審査が通りにくくなることがある
- 引き渡し後に隣地とのトラブルが売主の責任として扱われる可能性がある
こうしたリスクを避けるためにも、売却を検討し始めた段階で、境界の状況を確認しておくことが重要です。相続した土地で境界の状況が分からない場合は、相続登記の義務化についての記事もあわせてご確認ください。
境界トラブルの解決方法
境界トラブルの解決は、まず隣地所有者との話し合いから始まり、解決しない場合は土地家屋調査士による確定測量、それでも合意に至らない場合は法務局の筆界特定制度や弁護士への相談へと段階的に進めていくのが一般的な流れです。関係がこじれている場合ほど、早めに専門家を介するほうがスムーズに解決しやすくなります。
隣地所有者との話し合い
まずは隣地の所有者と直接話し合い、境界の認識をすり合わせることから始めます。過去の測量図や登記簿、公図などの資料があれば、話し合いの材料として役立ちます。
土地家屋調査士による確定測量
話し合いだけで解決しない場合や、そもそも境界標が見当たらない場合は、土地家屋調査士に確定測量を依頼するのが確実な方法です。専門家が間に入ることで、感情的な対立を避けながら、客観的な資料に基づいて境界を確定できます。
筆界特定制度の活用
隣地所有者との協議が難航し、合意に至らない場合には、法務局の「筆界特定制度」を利用する方法もあります。これは、土地家屋調査士や弁護士などの専門家が筆界(登記上の境界)を調査し、法務局が筆界の位置を特定してくれる制度です。裁判ほど時間や費用がかからず、比較的スムーズに解決できるケースもあります。
弁護士への相談
隣地所有者との関係が悪化していて話し合いが難しい場合や、越境の是正・損害賠償が絡む場合は、早めに弁護士に相談することも検討しましょう。
売却前に境界を確定しておくメリット
境界を売却前に確定しておくことで、買主に安心感を与えられ成約までスムーズに進みやすくなるほか、実測面積での正確な売買契約が結べ、引き渡し後のトラブルも未然に防げます。境界確定には時間と費用がかかりますが、早い段階で着手するほうが結果的に売却全体がスムーズに進むケースがほとんどです。
境界トラブルを売却前に解決しておくことには、次のようなメリットがあります。
- 買主に安心感を与えられ、成約までスムーズに進みやすい
- 実測面積で正確な売買契約を結べる
- 引き渡し後のトラブルを未然に防げる
- 隣地との良好な関係を保ったまま売却できる
境界確定には時間と費用がかかりますが、売却全体のスケジュールを考えると、早い段階で着手しておくほうが結果的にスムーズに進むケースがほとんどです。
境界確定を進めながら売却の相談先も探しておきたい方は、マイホーム売却ならスマート仲介
のような仲介サービスに早めに相談しておくと、境界確定の進め方も含めて並行して検討しやすくなります。
よくある失敗パターン
よくある失敗として、売却を決めてから境界確定に着手し隣接地の立ち会い調整などでスケジュールが大幅に遅れてしまうケースや、越境トラブルを把握していながら放置したまま売却活動を始め、契約後に発覚してトラブルに発展するケースが挙げられます。把握している問題は事前に不動産会社へ伝えておくことが大切です。
売却を決めてから境界確定に着手し、スケジュールが大幅に遅れた
境界確定測量は、隣接する土地所有者全員の立ち会いや、場合によっては官民境界の確認も必要になるため、想定以上に時間がかかることがあります。売却を検討し始めた早い段階で、不動産会社や土地家屋調査士に相談しておくことをおすすめします。
越境トラブルを放置したまま売却活動を始めてしまった
越境の問題を隠したまま売却を進めると、契約後に発覚してトラブルに発展する可能性があります。把握している越境や境界の問題は、事前に不動産会社に伝えておくことが大切です。
よくある質問
境界標が見当たらない場合、必ず確定測量が必要ですか?
隣地所有者との間で境界の認識が一致していて、過去の測量図など客観的な資料がある場合は、必ずしも確定測量が必須というわけではありません。ただし、実測売買を行う場合や、買主・金融機関から求められた場合は、確定測量が必要になることが多いです。
確定測量にはどのくらいの期間と費用がかかりますか?
土地の広さや隣接地の数、官民境界の確認が必要かどうかによって大きく変わりますが、一般的には数週間から数か月、費用は数十万円程度が目安とされています。早めに土地家屋調査士に見積もりを依頼しておくと安心です。
隣地所有者が立ち会いに応じてくれない場合はどうすればいいですか?
まずは書面で丁寧に立ち会いを依頼し、それでも応じてもらえない場合は、筆界特定制度の活用や、専門家(土地家屋調査士・弁護士)への相談を検討しましょう。
境界トラブルがあると、売却価格に影響しますか?
境界が未確定のままだと、買主から敬遠されたり、価格交渉で不利になったりする可能性があります。事前に境界を確定しておくことで、適正な価格での売却がしやすくなります。
売却の相談は、境界が確定していない段階でもできますか?
もちろん可能です。むしろ、境界の状況が分からない段階で早めに相談することで、必要な手続きや期間を見積もりやすくなります。顔の見える専門家に相談したい方は、不動産売却の窓口でも、境界トラブルを含めた売却相談を受け付けています。
まとめ
隣地との境界トラブルは、住んでいる間は気づきにくく、売却のタイミングで初めて表面化することが多い問題です。境界標の紛失や越境といった問題を放置したまま売却活動を進めると、買主とのトラブルや価格交渉の不利につながりかねません。売却を検討し始めた早い段階で境界の状況を確認し、必要であれば確定測量や専門家への相談を通じて、安心して取引を進められる状態を整えておくことをおすすめします。

