サブリース付きマンションは売却価格に影響する?解約の実情と旧契約の注意点を、新築ワンルーム販売出身の現役スタッフが解説

新築ワンルームを買ったときにサブリースを付けたのですが、売ろうと思って相談したら「サブリース付きは高く売れない」と言われてしまって。本当なんでしょうか? そもそも解約もできるのか不安です。

サブリース付きは買主の選択肢が狭くなりやすく、売却価格に影響することがあるのは事実です。ただ、サブリースは解約できる場合もあれば、契約内容によっては難しい場合もあります。私は新築ワンルームを販売する会社で販売に携わり、その後、別の中古ワンルームの会社で売却のご相談を数多く担当してきました。その経験も交えて整理していきましょう。

もう一つ気になることがあって。サブリースを解約しようとしたら、入居者を付けているサブリース会社がもう一社いた、という話を聞いたんですが、そんなことがあるんですか?

あります。解約を進めようとして初めて、契約したサブリース会社の先に、入居者を付けているサブリース会社がもう一社いたと分かった例を見てきました。違法と決まっているわけではありませんが、交渉相手が見えずに困ることがあります。あとで確認項目をまとめますね。
この記事のポイント
- サブリース付きの物件は、買主が賃料設定や管理会社を自由に決めにくい場合があり、契約内容によっては売却価格に影響することがあります。
- サブリース業者とオーナーの契約では、2020年12月15日から、契約締結前の重要事項説明などの規制が始まりました。施行前の契約は、内容を変更しない限り、改めて重要事項説明などを行う必要はないとされています。
- 施行後に契約内容を変更する場合は、変更の内容やこれまでの説明状況などによって、説明が必要な範囲を確認することが大切です。更新時は、前の契約書と見比べましょう。
- 契約したサブリース会社の先に、入居者を付けている別の会社がいる「サブサブ」の例もあります。売却前に、契約上の借主・転貸先の有無・再転貸の承諾・保証賃料の改定条項・解約の通知先を確認してください。
「サブリース付きは高く売れない」という話を、最近よく耳にするようになりました。実は、20年前はそれほどサブリースが多くありませんでした。
私が業界で見てきた範囲では、この20年ほどでサブリース付きの投資用マンションが広がり、売却時に価格や買主探しの面で課題になるケースも目立つようになりました。そのため、売却に向けて解約を検討するオーナー様もいます。
この記事では、新築ワンルームを販売する会社で販売に携わり、その後、別の中古ワンルームの会社で売却のご相談を数多く担当してきた現役スタッフの立場から、サブリース付き物件が売りにくくなった背景、解約の実情、法施行前の契約の注意点、そして一般の解説記事にはあまり出てこない「サブサブ」のケースまで解説します。
なお、手数料や入居率、解約費用の数字は、一般的な基準ではなく、あくまで私の経験に基づくものです。契約内容は一つひとつ異なるため、ご自身の契約書で確認してください。
サブリースの基本的な仕組みやリスクについては、関連記事「サブリース(家賃保証)契約のリスクとは?契約前に確認すべきポイント」で詳しく解説しています。
サブリース付き物件は本当に高く売れないの?
結論からいうと、サブリース付きの物件は、サブリースなしの物件より評価が下がりやすい傾向があります。ただし、サブリースの有無だけで価格が決まるわけではありません。
一般的に、次のような点が買主に敬遠されやすいと言われます。
- 買主が賃料を自由に設定できない
- 管理会社を自分で選べない
- 契約の内容を確認する手間がかかり、解約の条件も契約ごとに違う
- サブリース会社の賃料見直しや、契約の終了時の対応が読みにくい
買主から見れば、購入後に自分で運用方針を決められない物件は、選びにくくなります。その分、価格交渉の材料にされやすいと考えられます。
一方で、サブリースの賃料が周辺相場と比べて妥当で、契約内容が分かりやすい物件であれば、サブリース付きのままで売却できる場合もあります。サブリース付きだから売却できないわけではなく、私の経験では、価格が下がってしまうケースが多い、ということです。売却価格は、物件の立地や賃料水準、契約内容を合わせて判断されます。
ワンルームマンションのサブリースで、家賃や解約をめぐるトラブルが起きやすい理由は、関連記事「ワンルームマンションのサブリース、家賃が上がらない・解約できないトラブルとは」でも解説しています。
そもそもサブリースとは?
サブリースとは、サブリース会社がオーナーから物件を借り上げ、入居者へ転貸(また貸し)する仕組みです。オーナーはサブリース会社から、入居状況にかかわらず、契約で決めた賃料(保証賃料)を受け取ります。
サブリース会社は、入居者から受け取る賃料と、オーナーへ支払う賃料の差額が収益になります。入居者が入らない期間も、サブリース会社はオーナーへ賃料を支払うため、空室リスクを負う仕組みです。
法律上は、サブリース会社を「特定転貸事業者」、オーナーとの契約を「特定賃貸借契約(マスターリース契約)」と呼びます。
現場で見てきた、サブリースのこの20年
ここからは、新築ワンルームの販売側にいた私が見てきた流れです。数字や時期の感覚は、あくまで私の経験に基づきます。
20年前は、サブリースはまだ少なかった
20年ほど前は、今ほどサブリースが一般的ではありませんでした。それが徐々に増え、オーナー様と契約したサブリース会社の先に、入居者を付ける別のサブリース会社が入る、いわゆる「サブサブ」の形も出てきました。
当時は、空室が最大のリスクでした。空室の期間は入居者から家賃が入らないため、サブリース会社にとっては、そのまま負担になります。
コロナ禍の空室と、逆ザヤの負担
コロナ禍では、空室が一気に増えました。サブリース会社は、空室でもオーナーへ賃料を支払い続けなければなりません。
さらに、入居者から受け取る賃料が、オーナーへ送る賃料を下回る「逆ザヤ」になるケースもありました。その場合も、差額は不動産会社側が負担していました。
ここ3〜4年、私が担当した都心のワンルームでは空室期間が短い傾向に
ここ3〜4年、私が担当した都心のワンルームでは、空室期間が短く、募集を始めると比較的早く次の入居者が決まるケースを多く見てきました。ただし、空室率や入居付けの状況は、エリア・駅距離・賃料・築年数・物件の状態などによって異なり、すべての物件に当てはまるわけではありません。
物価上昇とともに、家賃を上げたいと考えるオーナー様も増えてきました。空室が出にくい状況では、「空室でも賃料を保証する」というサブリースの安心感は、以前より小さくなっているというのが私の見方です。一方で、保証賃料が固定のままだと、家賃が上がっても、その恩恵は受けにくくなります。
サブリース会社が利益を出す仕組み(私の経験)
私が関わった契約では、オーナーへ支払う保証賃料と入居者から受け取る賃料との差が、入居者賃料の約10%前後に相当するケースがありました。ただし、差額の割合や収支構造は契約・会社ごとに異なります。また、入居率だけで会社の利益が決まるわけではなく、募集費用、管理費、修繕費、空室期間なども影響します。以下は、あくまで私が見てきた範囲での経験です。
この差額や手数料の考え方が、オーナーとの契約書に明示されていないケースも、私の経験ではありました。そのため、オーナー側からは、入居者に実際いくらで貸しているのかが分かりにくい場合があります。契約書に記載があるかどうか、また開示に関する取り決めがあるかを確認しましょう。
新築が完成した直後は、どうしても空室になります。ただし、その時点では販売による利益が大きく、全体としては十分にプラスでした。
私の経験では、新築デベロッパーには、2〜3か月に1棟のペースで新築マンションを作る会社があり、中には月に1棟ペースの会社もありました。
そうなると、完成のたびに入居者を募集することになり、自社だけでは入居者付けに手が回らなくなります。そこで、入居者を付けるサブリース会社へ任せるケースが増えてきた、という印象です。もともと入居者付けが得意ではないデベロッパーもありました。これが、「サブサブ」の形が出てきた背景の一つだと私は見ています。
つまり、サブリースは「空室リスクを会社が引き受ける代わりに、販売の利益や手数料で採算を取る」仕組みの一部でもあったということです。
家賃が上がっても、保証賃料が上がらない契約(例)
いま問題になっている例の一つが、保証賃料が当時のまま固定されている契約です。数字は、わかりやすくするための仮の例です。
たとえば、当時9万円で入居者に貸していた部屋について、サブリース会社が8.2万円を保証する契約を結んだとします。その後、相場が上がって現在は10万円で貸していても、オーナー様に支払われる保証賃料は8.2万円のままです。当時は約0.8万円だった差額が、現在は約1.8万円まで広がっている計算です。
先ほどの取り分が契約書に書かれていないと、オーナー様は入居者への実際の賃料を知らないまま、保証賃料だけを受け取ることになります。そのため、相場とのずれに気づきにくい点が問題です。
なお、国土交通省のガイドラインでは、重要事項説明の項目として、サブリース会社がオーナーへ支払う家賃の額や改定に関する定めなどが挙げられています。一方、入居者から受け取る転貸賃料や差額の開示については、契約や個別の事情によるため、必ず開示されるとまではいえません。必要な情報を確認したい場合は、契約条項を確認したうえで、サブリース会社へ書面で問い合わせる方法があります。
オーナーから物件を借りているのはサブリース会社であり、オーナーと入居者の間に直接の賃貸借契約がないことも多いため、入居者の賃料などの情報をオーナーが把握しにくい場合があります。ただし、開示の可否は契約内容や個別の事情によるため、一律に開示されないと断定することはできません。
サブリース会社はオーナーとの関係では賃借人に当たり、借地借家法などの適用を受ける場合があります。ただし、それだけで転貸先の賃料などを開示しなくてよいと一律に決まるわけではありません。情報が得られない理由は、契約条項や個別の事情も踏まえて確認する必要があります。
一方、私の経験では、実際の賃料などを確認できれば、物件評価の検討材料が増えるという金融機関もありました。ただし、融資評価の方法は金融機関ごとに異なり、実際の賃料が分かれば必ず評価が上がるわけではありません。情報の開示を求めても得られない場合は、保証賃料や契約条件を前提に査定を依頼し、評価の違いを確認しましょう。
入居者の賃料が分からない以上、売却や解約を考えるときは、まず契約書で保証賃料の条項と改定の定めを確認しましょう。そのうえで、周辺の募集賃料と比べて保証賃料が低くないかを、不動産会社に見てもらう方法があります。解約後の賃料で査定を取ると、サブリース付きとの差が大きく出ることがあります。
サブリース賃料と実際の賃料で、収益還元法の評価額はどう変わる?
収益還元法の簡易計算で、評価の違いを見てみましょう。数字は仮の例で、利回りは3.8%、管理費・修繕費は月1万円としています。利回りは、立地や築年数で変わります。
| 項目 | サブリース賃料で評価 | 実際の賃料で評価 |
|---|---|---|
| 月額賃料 | 8万円 | 9.5万円 |
| 管理費・修繕費を引いた額 | 7万円 | 8.5万円 |
| 年間の純収入 | 84万円 | 102万円 |
| 評価額(年間の純収入÷3.8%) | 約2,210万円 | 約2,680万円 |
月1.5万円の賃料の差で、評価は約470万円変わります。評価の考え方そのものが変わるわけではなく、計算に使う賃料が変わるだけです。
この表は収益還元法の簡易計算であり、実際の金融機関の担保評価や融資額を示すものではありません。実際の評価は、金融機関や物件によって異なります。ただ、サブリース会社が実際の賃料を開示してくれなければ、この差を評価に反映する機会がありません。
「高く売れない」流れと、解約の増加
あるころから、サブリース付きだと高く売れないという流れが出てきました。それに合わせて、売却するオーナー様のサブリース解約が、どんどん増えていきました。
私自身も、売却に向けて、オーナー様のサブリース解約を数多く担当しました。解約にかかる手数料(解約金)は、私の経験では、賃料の約6か月分に設定されている契約がほとんどでした。もちろん、金額や条件は契約ごとに違います。
「解約金を払ってでもサブリースを外して売る」か、「付いたまま、価格を下げて売る」か。この判断は、今も売却の大きな分かれ道です。
解約が増えた後に起きたこと
デベの賃貸管理が減っていった
サブリースの解約が進むと、新築デベロッパー側は、賃貸管理の件数が減っていきます。賃貸管理は一つの事業であり、管理手数料は、会社にとって大切な収益です。
そのため、管理を減らしたくない会社の側にも、事情があったのではないかというのが、私の見方です。もちろん、これは私見であり、すべての会社に当てはまるわけではありません。
借地借家法を理由に、解約や退去に応じない例
サブリース契約には、通常の賃貸借と同じく、借地借家法が適用されます。国土交通省のガイドラインでは、オーナー側から更新を拒絶するには「正当の事由」が必要であることが示されています。東京都住宅政策本部の資料でも、中途解約について、契約書に「数か月前の予告」と書かれていても、正当事由が認められなければ解約できないと説明されています。
このような法的な枠組みを背景に、サブリース会社が賃借人の立場から、オーナー側の解約や更新拒絶に応じないケースがあります。ただし、解約の可否は契約条項や解約の理由、個別の事情などによって異なります。契約書に予告期間が記載されていても、その記載だけで必ず解約できるとは限らないため、必要に応じて弁護士へ確認しましょう。
なお、サブリース契約の解除を妨げるために、判断に影響する重要な事実を故意に告げなかったり、事実と異なることを告げたりする行為などは、賃貸住宅管理業法第29条で禁止されています。ただし、解約に応じないこと自体が直ちに同条違反になるわけではありません。違反が疑われる場合は、やり取りや書面を保存し、弁護士などの専門家に相談しましょう。
参考:国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」
解約への対応は、会社によってさまざま
もちろん、すべてのサブリース会社が解約に応じないわけではありません。私が知っている会社の中には、手数料はかかるものの、解約にきちんと応じてくれる、しっかりした会社もあります。
一方で、解約したいと連絡しても、まともに受け付けてもらえないことがあります。私の経験では、弁護士からの内容証明が届かないと対応しない会社や、裁判の通知が届くまで動かない会社もあり、対応は会社によってさまざまです。
ワンルームのオーナー様は、物件ごとに個別の契約をしていて、持っているのは1戸だけ、という方が多くいらっしゃいます。1戸のために弁護士へ相談するのはしづらく、そのために話が進まないことがあります。
売却のご相談(査定や進め方の整理)は、無料で承っています。契約書を拝見して、内容がやっかいそうな場合は、サブリースに詳しい弁護士をご紹介することもできます。ご希望の方は、お問い合わせフォームからご連絡ください。なお、法律上の判断や解約の交渉は、弁護士の仕事です。
サブリースの仕組みに感じる歪み(私見)
借地借家法は、本来、住まいを借りる入居者を守る法律です。ところがサブリースでは、その借主の立場にいるのが不動産業者になります。
その結果、借主として守られるのは不動産業者で、貸主である個人のオーナー様のほうが、解約や入居者情報の面で圧倒的に不利になっている、というのが私の見方です。2020年12月に勧誘や説明のルールは整いましたが、借主が不動産業者である場合の保護の在り方までは、まだ議論の余地があると感じています。
私は、サブリースのために不動産業者が借主になっているケースについて、法整備がさらに進むことを望んでいます。これはあくまで私個人の意見です。もちろん、すべてのサブリース会社がオーナー様に不利な運用をしているわけではありません。
2020年12月に始まった規制と、旧契約の落とし穴
2020年12月15日から、何が変わったのか
賃貸住宅管理業法により、2020年12月15日から、サブリース業者とオーナーの間の契約について、次のような規制が始まりました。
- 誇大広告等の禁止:実際より良い条件だと誤認させる表示などを禁止
- 不当な勧誘等の禁止:家賃減額のリスクや解約の可能性などを故意に伝えない行為などを禁止
- 契約締結前の重要事項説明:サブリース業者が、オーナーとなる人に対し、書面を交付して説明
- 契約締結時の書面交付:賃料、契約期間、更新・解除の定めなどを記載
特に重要なのは、サブリース業者からオーナーへの重要事項説明です。契約の前に、賃料の見直しや解約の条件など、オーナーが不利益を受けやすい点を、書面で説明することが義務になりました。
参考:国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータル「適正化のための措置」
法施行前の契約を更新するときの注意点
法の施行前に結んだサブリース契約は、施行後の重要事項説明などの扱いに注意が必要です。国土交通省の資料では、契約内容を変更しない場合は、改めて重要事項説明などを行う必要はないとされています。変更を伴う場合は、契約の状況や変更内容に応じて、必要な説明の範囲を確認しましょう。
| ケース | 重要事項説明・書面交付 |
|---|---|
| 施行前の契約を、内容を変えずに更新する | 改めて行う必要はないとされる |
| 契約の同一性を保ったまま期間だけを延長する、組織に変更のない商号変更など、形式的な変更 | 行わなくてよいとされる |
| 契約内容を変更する更新・変更契約 | 契約の状況や変更内容に応じ、必要な重要事項説明・書面交付を確認する |
つまり、内容を変えずに更新する場合は、改めての重要事項説明などは不要とされています。一方、更新時に新しい契約書を提示された場合は、前の契約書と比較し、実質的な変更がないか確認しましょう。変更がある場合に必要な説明や書面交付の範囲は、契約の経緯や変更内容によって異なるため、国土交通省の案内や専門家に確認することをおすすめします。
旧契約は「ゆるい」とは限らない
法施行前の契約は、現在の基準と比べて、条項が簡素な可能性があります。そのため、解約の条件が比較的ゆるく、解約しやすい契約が残っている可能性はあります。
ただし、ゆるいか厳しいかは、契約書の中身次第です。「古い契約だから解約しやすい」と決めつけず、必ず契約書の条文を確認してください。
そのうえで、更新時に新しい契約書を出された場合は、次の点を確認しましょう。
- 前の契約書と比べて、解約条件や解約金の定めが変わっていないか
- 賃料の見直しに関する条項が変わっていないか
- 内容を変えずに、更新できないか
更新の機会は、契約内容を見直すタイミングでもあります。「説明を断る」のではなく、「内容を変えずに更新できないか」を確認し、内容が変わるなら、きちんと説明を受けたうえで判断することが大切です。不安な場合は、弁護士や賃貸不動産経営管理士などの専門家に相談しましょう。
契約したサブリース会社の先に、もう一社いる「サブサブ」
ここからは、一般の解説記事にはあまり出てこない、私が実際に見てきた話です。
「契約したA社の先に、B社がいた」ケース
売却のためにオーナー様のサブリースを解約しようとしたところ、契約したサブリース会社(A社)の先に、入居者を付けているサブリース会社(B社)がもう一社いたと分かったケースがありました。
家賃の流れは、入居者→B社→A社→オーナー様の順です。オーナー様が契約しているのはA社で、B社とは通常、直接の契約関係がありません。そのため、B社の存在は解約を進めて初めて分かることがあります。オーナー様が直接契約しているのはA社であるため、B社や入居者に関する情報を把握しにくい場合があります。開示の可否は契約内容や個別の事情によるため、必要に応じてA社へ書面で確認しましょう。いわゆる「サブサブ」の状態です。
再転貸が行われているという事実だけで、直ちに違法と決まるわけではありません。ただし、再転貸が認められているか、契約上どのような承諾・通知が必要かは、マスターリース契約や関連契約の内容によって異なります。無断転貸などの問題が疑われる場合は、契約書を確認し、弁護士などに相談しましょう。
何が困るのか
このケースで困るのは、主に次の2点です。
- 解約の交渉相手が分かりにくい。契約したA社だけでは話が完結せず、入居者を付けているB社の対応も確認する必要が出てくる
- 売る側も把握していないと、買主への説明が漏れることがある。不動産の売買では、物件に付いている賃貸借の内容を、買主に説明するのが通常
私が見てきた範囲では、販売する側の担当者も、転貸の実態を知らなかったケースがありました。もちろん、すべての会社がそうだという意味ではありません。
売却の前に確認したい5つのポイント
サブリース付きの物件を売る・買う前に、次の5点を確認しましょう。
| 確認項目 | 見る場所 | 大切な理由 |
|---|---|---|
| 契約書上の借主は誰か | マスターリース契約書の当事者欄 | 解約の相手を確認するため |
| 入居者を付けている会社は他にないか | A社への書面での問い合わせ、マスターリース契約書の転貸に関する条項 | 契約した会社の先に別の会社がいるか、分かる範囲で確認するため |
| 再転貸の承諾があるか | マスターリース契約書の転貸に関する条項 | 他社への転貸を認めた契約かを確認するため |
| 保証賃料の改定の定めはどうなっているか | マスターリース契約書の賃料・改定に関する条項 | 相場が上がっても保証賃料が変わらない契約かを確認するため |
| 解約の通知先はどこか | 解約に関する条項 | 通知が有効に届くようにするため |
これらは一般的なチェック項目です。再転貸の扱いは契約書ごとに異なるため、不安な場合は弁護士や賃貸不動産経営管理士に相談してください。
サブリース付きの物件を売るとき、まず何をすべき?
売却を考えるオーナー様は、焦って解約を申し入れる前に、順番に整理していくのがおすすめです。
STEP1:契約書を集めて、解約条件を確認する
マスターリース契約書、更新時の契約書、賃料の改定通知などを集めます。そのうえで、解約の予告期間、解約金、賃料の見直し条項を確認します。
STEP2:「サブリース付き」と「解約後」の両方で査定を受ける
不動産会社には、サブリース付きのまま売る場合と、解約してから売る場合の、2パターンで査定を依頼しましょう。仲介と買取の違いは、関連記事「不動産売却の「仲介」と「買取」の違い、どちらを選ぶべきか」で解説しています。
STEP3:手元に残る金額で比較する
売却方法ごとの特徴は、次のとおりです。
| 売り方 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| サブリース付きのまま売る | 解約金がかからない。手続きが比較的早い | 買主が限られ、価格が下がりやすい |
| 解約してから売る | 買主の選択肢が広がり、価格が上がる可能性がある | 解約金がかかる。解約に時間がかかる場合もある |
大切なのは、売却価格だけでなく、解約金や税金を差し引いた「手元に残る金額」で比べることです。税金については、関連記事「不動産売却でかかる税金とは?譲渡所得の計算方法・税率・確定申告をわかりやすく解説」を参考にしてください。
サブリース付きのまま売る場合の注意
サブリース付きのまま売却すると、原則として買主がオーナー(賃貸人)の地位を引き継ぎます。国土交通省のFAQでは、サブリース業者は賃貸人の地位の移転を認識した後、遅滞なく、新しい賃貸人へ契約内容が分かる書類を交付することが望ましいとされています。売主としても、マスターリース契約書や更新書類、賃料改定通知などを整理し、買主へ正確に説明できるようにしておきましょう。
物件の収益性を、買主がどう見るかについては、関連記事「表面利回りと実質利回りの違いとは?不動産投資で失敗しないための基礎知識」も参考になります。
サブリース付きのまま売却するべきか、解約してから売却するべきかは、契約内容や解約費用、売却価格によって異なります。
不動産売却の窓口では、サブリース契約の内容を確認したうえで、売却方法や査定の進め方をご相談いただけます。まずは「サブリース付きのまま売った場合」と「解約してから売った場合」の違いを整理してみませんか。
よくある質問
サブリース付きの物件は、本当に高く売れませんか?
サブリース付きだと、買主が賃料や管理会社を自分で決めにくいため、評価が下がりやすい傾向があります。ただし、サブリースの有無だけで価格が決まるわけではありません。賃料の水準や契約内容が分かりやすい物件であれば、サブリース付きのまま売却できる場合もあります。
サブリースの解約には、どれくらい費用がかかりますか?
契約ごとに異なります。私の経験では、賃料の約6か月分に設定されている契約が多くありました。ただし、これは一般的な基準ではありません。契約書の解約条項で、予告期間と解約金の定めを確認してください。
契約したサブリース会社の先に、別のサブリース会社がいることはありますか?
あります。契約したA社の先に、入居者を付けているB社がもう一社いたケースを、私は実際に見てきました。家賃は入居者→B社→A社→オーナー様の順に流れます。再転貸の扱いは契約書ごとに違うため、契約上の借主、転貸先の有無、再転貸の承諾、保証賃料の改定の定め、解約の通知先を確認してください。
法施行前のサブリース契約を更新するとき、気をつけることはありますか?
内容を変えずに更新する場合は、改めての重要事項説明などは不要とされています。一方、契約内容を変更する場合は、契約の経緯や変更内容などに応じて、必要な説明や書面交付の範囲を確認することが大切です。更新のたびに前の契約書と見比べ、解約条件や解約金、賃料改定条項などが変わっていないか確認しましょう。
解約したいのに、サブリース会社が応じてくれない場合はどうすればよいですか?
サブリース契約にも借地借家法が適用されるため、オーナー側から解約や更新拒絶をするには、正当の事由が必要になる場合があります。契約書の条文を確認したうえで、弁護士や賃貸不動産経営管理士などの専門家に相談しましょう。
サブリース付きのまま売却するとき、買主への説明で気をつけることは?
賃貸借の内容を、買主へ正確に伝えることが大切です。契約書上の借主、賃料、契約期間、解約条件に加えて、入居者を付けている別のサブリース会社がある場合は、その内容も整理して伝えましょう。
まとめ
サブリース付きの物件は、契約内容や保証賃料の水準などによって、売却価格や買主探しに影響することがあります。ただし、サブリースが付いているだけで必ず売却価格が下がるわけではありません。解約を検討する場合も、解約条件や費用、手続きにかかる期間を確認してから判断しましょう。
賃貸住宅管理業法の施行後は、サブリース業者とオーナーの契約について、契約締結前の重要事項説明などが義務付けられました。施行前の契約は、内容を変更しない限り、改めての説明などは不要とされています。更新時には前の契約書と見比べ、解約条件や賃料改定条項などに変更がないか確認することが大切です。
また、契約したサブリース会社の先に、入居者を付けている別の会社がいる「サブサブ」のケースもあります。売却や解約を考えるときは、契約上の借主、転貸先の有無、再転貸の承諾、保証賃料の改定条項、解約の通知先を早めに確認してください。
そのうえで、サブリース付きのまま売る場合と、解約してから売る場合の2パターンで査定を取り、解約金や諸費用などを差し引いた「手元に残る金額」で比較すると、判断しやすくなります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。契約内容や状況は一つひとつ異なり、本文中の数字や事例は筆者の経験に基づくものです。具体的な判断は、契約書をご確認のうえ、弁護士や賃貸不動産経営管理士などの専門家にご相談ください。

